鹿野颯斗個展「偶然の波うち際」


ステートメント

「当事者と非当事者」の分断はどこまで行っても消えないのかもしれない。しかし、それは単純な分断を意味するのだろうか。 

1人の人間の中には複数の当事者性と非当事者性が、それぞれの中心点を持った円が重なるように存在している。ある出来事においては当事者であり、他のある出来事においては非当事者でもある(部分的に重なり合うこともある)。円の周縁が描く線は重なり合いながら、その人の中に複雑な線を描いている。分断されること自体ではなく、分断により関係性が単純化されていく、そのことが問題なのではないか。 

私は分断線を単純な直線と捉えず、波打ち際で生まれる波線のように、時間とともに変成を繰り返すものとして考えている。偶然性の中で形を変えていく波線とその複雑な重なり合い。変化し続ける海と陸の境界線。それを引き受けていくこと。そのためには偶然性へと身を開かなければいけない。自然災害という途方もない偶然性に見舞われ、防波堤という境界線を作り続けているこの地で、それでもなお波打ち際へと近づき偶然性へこの身を開くとはできるのか。分断線によって単純化されるのではなく、いくつもの分断線を引き受けた複雑な状態を保ち続けるために。 

2021.04 鹿野颯斗 


展示概要

会期:2021年4月16日(金)〜2021年5月30日(日)
会場:GALVANIZE gallery(石巻のキワマリ荘1F) [宮城県石巻市中央2-4-3])
日時:会期内の毎週金・土・日曜/11:00~18:00  
料金:無料 
作家:鹿野颯斗 作家サイト



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